安藤桃子監督から子どもたちへのメッセージ

そこに向かって行くときに、みんながつまずきやすいところは?

それって、「失敗は良くない」ってところなんじゃないかしら。

社会でも、失敗したらいけない、失敗したら終わり。スキャンダルを起こしたら一巻の終わり、という隠していく緊張感にギュッと身がすくんだり、かたやSNSでソーシャルに、みんながみんなの前に出ていく、というせめぎ合いがあります。「失敗のない世界」は、失敗がなくなるっていう意味じゃない。意識の問題だと思うんです。

「成功しないといけない。成功するためには、どういうルートで、最短で、どうやって、どこをどう通っていけばいいのか? 」それでは、いつまでたっても過去の域を超えられない。満たされない。結局、空虚な気持ちになる。

一回も失敗したことがないよりも、七転び八起きの方がいい。失敗談を笑いながら、美意識で次につなげていく「七転び八起き」の力が高知にはあります。大いに失敗して、そこから生まれてくる「次」というのは、必ず過去の領域を超えられる。その超えていく力が面白いのです。それが、喜びそのものだと思うんです。自分が成長していく、塗り替えていける、それこそが生きる喜び、満たされる!

AIで引いたまっすぐな線と、人間が引いたまっすぐな線。AIの線は確かにまっすぐだけど、人間がまっすぐに描いたと思っている画用紙の線は、拡大したらきっと微妙に震えていたり、その人のリズムや波が出ているはず。それを失敗と言うの? 想像(イマジネーション)創造(クリエイション)の中で、どっちが響くの?感じるの? 造形においても、何回も何回も手を滑らせて、滑らせて作ったその焼き物と、いきなり型にはめて、ポンポンポンと「これが正解です」と出したもの、どっちが響くんだろうか? 同じ線でも、同じ形でも、やっぱり人が試行錯誤しながら、整えて、整えて、生み出したものが胸にグッとくる。

子どもたちと映画作りをしていく中では、「どうして?」「わざわざ?」というような、現場のみんなの出す波を、そこに表していくことが超大切。そこに失敗はなし。

むしろ、そこで出し切ったことが、良かったことも、そうじゃなかったことも含めて、全部が必ず最高にハッピーな未来につながっていく。

新聞の中でも、世の中の失敗談などが報じられています。土佐に生き暮らしていたら、全国ニュースはやっぱりどこか遠くのことだから、報じられていても、それは次の日、またその翌日と上塗りされていっちゃう。けれど、地方紙ってなかなか上塗りがされていかないもの。だからこそ、その中に人間味を持っていくことが大事になる。

子どもたちとの映画作りを通じて、「失敗と成功はつながっている。失敗したら終わりではなく、失敗には必ず次の成功への道筋がある」ということを開いていきましょう。そう!ポジティブな喜びビジョンです。それは何より、シンプルに楽しむということ。

こういった発信をしていくこと自体が、結果的に地方新聞の大きな可能性にもつながっていくんじゃないか、と信じています。

今回の伝える・伝わるプロジェクトについて

今回の「伝える・伝わるプロジェクト」では、まず、過去の新聞記事をリサーチします。歴史発見。子どもたちが新聞社で、過去の新聞を実際に調べていきます。長く歴史を重ねてきた新聞の中には、その地域が復興していくための題材や知恵がいっぱいあります。そこから、子どもたち自身がストーリーを見つけていきます。

それをどう「伝え」、どう「伝わっていく」のか。

それが地方紙の役割なんじゃないかと思います。

リアルって何? 長く人が営み、繰り返し、伝えてきたもの、こと。

100年、200年、500年と続いてきたものに価値を感じ、「それを味わいたい!」と世界中から人がやって来ます。AIやネットで検索して知るだけでは、本当には伝わらない。だからこそ、そこへ行って、その空気感を感じたいと、日本を訪れ、東京だけではなく地方へ、高知へ足を運ぶ人たちがいます。なんで、わざわざ遍路まわりをするのか?です。体をもってやる、脳だけでは意味がない、体があるからこそ、伝わるのだと思います。「これはいいものだ!」「これってこうだな!」というふうに、自分の中にある感性、感覚を、音や音楽のように響かせてみる。それが「伝わる」ということだと思います。響かせることが、すごく大事。

子どもたちには、無垢な感性と感覚があります。大人は「経済性がないから、これはやめた方がいい」と、どちらかといえば伝統を閉じようとしていくところがあります。でも、子どもたちの感覚で見てみると、むしろ開けていった方が、今の社会の中で経済的にも良くなっていくかもしれない。その中には、もう一段上がっていける、すごいチャンスがあります。

地域の中にそういうものがあっても、私たち大人には、それを感じ取る感覚が薄れていることもある。でも、子どもたちは、そこにあるものをまっすぐに感じ取ることができる。そして、そこから世界へ、新しいご縁が響いてくる。

アメリカの方が遍路をしているように、今、縁のつき方は変わってきています。遠く離れた場所から高知へ飛んできてくれ「ああ、故郷。なつかしい」と、あとからじわりと感じることもある。

だから、子どもたちと映画づくりをしていくこと、新聞で過去を調べること、地域の中にあるものを、子どもたちの感性と感覚で見つけること、そこで起きる失敗も、成功も、全部含めて、地方新聞として見て、伝えていくこと、その中にほんとう、リアルがあると思うんです。

そして、伝わっていく。地域から、世界に伝わっていく。

それが、この「伝える・伝わるプロジェクト」の“らしさ”なんじゃないかなと思います。